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府中けやき共同事務所

2020/03/31

エンディングノートと遺言書の違い

こんにちは!
司法書士法人府中けやき共同事務所の秋池です。

今月も皆様のお役に立つ登記・相続の知識を司法書士の視点から解説していきます。

前回は「相続放棄」について解説しましたが、記事の最後に『相続の基本は腹を割って話すことから始まる』と書かせていただきました。人と人の間で何か物事が動くときは、どんなことでも相手が何を望んでいるのかを知っておくことは大切なことです。

そこで今回は「エンディングノート」について解説していこうと思います。エンディングノートとは何なのか?遺言書との違いは?どんなことが書けるの?といった基本的なことについて解説していきますので、どうぞ最後までお付き合いください。

 

エンディングノートって何?

最近では相続法改正の影響もあり、相続関連の話がテレビでも取り上げられることが増えてきたように思います。そのため、すでにエンディングノートについて一体どういった物か?ということをご存知の方も多いのではないでしょうか。

エンディングノートとは、ご自身の死後残された家族に対して、ご自身の考えや行ってほしいことを伝えることを目的に書かれたものです。

ここでこんな考えをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?


「遺言書と同じ物なのでは? 遺言書でも自分の希望を家族に伝えられると思いますが…」

そういった考えを持つのは当然ですね。

しかし、エンディングノートと遺言書には大きく分けて4つの違いが存在します。それぞれどんな点が違うのかを解説していきます。


①法的効力
遺言書:法的効力があります。
エンディングノート:法的効力はありません。

法的効力という難しそうな言葉が出てきましたが、分かりやすく言うと、日本は法治国家ですので我々国民は法律を守って生きて行かねばなりません。


遺言書は民法という法律の第五編、第七章に、書けることや書き方から効力、書いた方が亡くなった後に見つけた人が行うことまで、手続き上必要になるすべてが記載されていますので、これに従って書く人も残された家族も行動する必要性があります。遺言書に遺産の分け方が記載されていれば遺留分や特別寄与分といった場合を除き、書いてある通りに遺産を分ける必要があるのです。

一方、エンディングノートはどんな法律にも規定はありません。そのため、残されたご家族に自身の死後の手続きをお願いすることは出来ても、強制させることは出来ないのです。もちろん、遺産の分け方を記載したとしても強制力はありませんので、ご自身の望む通りの分け方になるとは限りません。

エンディングノート「(自身の死後の手続きを)こんな風にしてね」
遺言書「(自身の死後の手続きを)こうしなさい。違反したらペナルティもありますよ!」

エンディングノートと遺言書には上記のような効力の差があるということです。


②書き方の違い
遺言書:3種類
エンディングノート:何にどのように書くことも可能

遺言書の書き方については以前当ブログで記事を書いておりますのでそちらを参考になさってください。
ここでは書き方の種類だけ簡単にご紹介します。
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言
普通方式遺言の場合、以上の3種類です。

エンディングノートに決められた書式はありません。その名の通りノートに手書きで書いても、パソコンやスマホで書いても書く人の自由です。最近では市販のエンディングノートもありますので、そういった物を活用するのも良いでしょう。

③書く内容
遺言書:相続分の指定や遺産分割方法の指定、相続人の廃除など
エンディングノート:何を書いても自由

遺言書は法的効力の項目でも解説したように、書けることが決まっています。ここでは遺言書に書くことのできるものすべての解説はしませんが、主にご自身の財産(遺産)に関することについて書くことが可能です。それ以外を書いたからといって遺言書が無効になったりはしませんが、例えば「延命治療を拒否する」と書いても法的効力は持ちません。

例に挙げた「延命治療を拒否する」といったようなことはエンディングノートに書くことをお勧めします。エンディングノートは非常に自由度の高い物ですので、お葬式の方法や、亡くなったことを知らせてほしい人、残された家族へのメッセージなどご自身の希望や想いを伝えることも可能ですし、利用している通信サービスや電機・ガス・水道等の定額利用サービスの契約連絡先といった事務的なことも残すことで、家族は各種手続きをスムーズに行うことが可能です。


なお、エンディングノートに決まった書き方が存在しないことはすでに述べた通りですが、書き出す最初は、ご自身の名前・住所・生年月日などの個人情報にしておくと、誰が書いたものであるか明確に分かるため、残された家族も安心してページを開いていくことが出来ると考えます。

④開封する時期
遺言書:公正証書遺言以外は家庭裁判所での検認が必要(20203月現在)
エンディングノート:いつ見ても自由

公正証書遺言以外の遺言書をご家族が見つけた場合、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で検認の手続きをする必要があります。見つけたからといって勝手に開封してはいけません。


検認とは遺言書の内容や状態を明確にして、偽造や変造を防ぐために行う手続きです。ただし、遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。分かりやすく言うと、家庭裁判所にお願いして相続関係者の前でどんな内容か一緒に確認してもらうといった作業です。


例えば自筆証書遺言書を発見した方は上記の家庭裁判所に検認の申立てを行います。その後、家庭裁判所から申立人と法定相続人に検認期日(検認をする日)が通知され、遺言書が開封されるといった流れです。


後は、遺言書が有効な物であれば、書いてある通りに遺産の分割が行われます。


上記、家庭裁判所での「検認」は2020710日から施行する『法務局における遺言書の保管等に関する法律』に基づいて、法務局が保管した自筆証書遺言であれば不要となる予定です。より気軽に遺言書の作成が行え、なおかつ法務局が保管してくれるわけですから紛失の心配もなく、我々国民にとって非常に便利な制度がスタートすることになりました。この制度に関しては施行時期である7月が近くなりましたら、改めてブログで詳しく解説していきますのでお待ちください。


遺言書と比べエンディングノートはいつ見ても、誰が見ても自由です。当然、検認も必要ありません。生前に見せてもらう、または見せることも可能ですので、先の例で挙げた延命治療のことなどもご家族に伝えることが可能というわけです。また、意識不明の状態や亡くなってしまった場合でもすぐに中身を確認することが可能ですので、書いた方の希望をすぐに叶えてあげやすく、ご自身とご家族の双方にとって便利なものであると言えるでしょう。

エンディングノートは必要?

遺言書は法的効力もあり、財産に関する項目はほぼご自身の希望通りに家族へ行き渡ります。しかし、人が生きてきた中で築いたものは財産だけではなく、人間関係・信念・哲学・信条など金銭的な価値では測れないものも多分に含まれています。


あまり考えたくはないですが、人生がいつ終わってしまうかは誰にもわかりません。高齢だからもうすぐかもしれない…であるとか、若いからまだまだ元気だ!という保障はどこにもないのです。もし、終わってしまうその時が来たら、お金のことも大切ですが、ご自身の想いを届けられるエンディングノートの存在は残されたご家族や友人にとって、とてもありがたいものとなるのではないでしょうか。

遺言書とエンディングノートは似ている部分も多く、弊所へのご相談でも勘違いをされている方は非常に多いです。弊所ではご相談頂ければ、エンディングノート作成のお手伝いもさせて頂きますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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