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府中けやき共同事務所

2021/03/31

おひとりさまの相続

こんにちは!

コロナ禍も1年が経とうしていますが残念ながら終息する気配はありません。
個人的に感じることですが、この1年で“相続”について考える方が増えたように思います。
未知のウイルスと聞くと真っ先に命の心配をすることは当然ですが、自分に万一のことがあった場合これまで築いた財産はどうなるのか? ということに関心が向くこともまた必然なのかもしれません。

お子さんがいらっしゃる方であれば、子どもに財産が受け継がれていくのだろうと想像されると思いますが、単身者世帯の方などいわゆる“おひとりさま”は自身の財産がどのように移っていくのか考えたことはあるでしょうか。

そこで今月のブログでは「おひとりさまの相続」と題し、今からやっておきたい対策や「おひとりさま」ならではのリスクについて解説してまいります。
現在単身者世帯の方やお子さんのいらっしゃらないご夫婦の方にはぜひ知っておいていただきたい知識となりますので、どうぞ最後までお付き合いください。




おひとりさまの増加


厚生労働省の行った2019年国民生活基礎調査によると、全国の世帯総数のうち「単独世帯(単身者世帯)」が全世帯の28.8%という結果となっており、夫婦のみの世帯は全世帯の28.7%となっているそうです。

また、総務省が発表した平成30年版情報通信白書によると2040年には単独世帯の割合が約40%に達すると予測されています。
少子高齢化と言われる現代、そして未来を象徴するかのような調査結果と言えますね。


おひとりさま相続はなぜリスクがあるのか?




上図をご覧ください。
亡くなった方に配偶者もお子さんもおらず、両親や兄弟はすでに亡くなっているという事例です。
本事例の場合は甥が存在しますので、亡くなった方の財産は遺言書が無い限りすべて甥が相続することになります。

事例では甥が一人だけですが、もし何人も甥や姪がいたら亡くなった方の遺産分割協議は円満に進むと言えるでしょうか? 揉め事に発展しなかったとしても、亡くなった方と関係性の薄い相続人が多く登場することになるので、遺産分割協議もスムーズには進展しないことが予想されます。

また、関係性が薄いわけですから亡くなった方の財産を正確に把握することも難しいケースが多いと言えます。
ネット銀行やネット証券会社に代表されるように今後ますますペーパーレスは進展し、金融商品も複雑化しています。


・ログインパスワードがわからない
・どこの金融機関に口座があるかわからない
・引き落とされているお金が何の費用かわからない


いずれも十分予想されるケースです。
もっとも、ログインパスワードなどは家族であっても知らない場合が多いでしょうから、どこの金融機関に口座を所持しているか? という情報くらいは共有しておくべきでしょう。



これらのリスクを踏まえてどのような手段をとれば回避できるでしょうか?
考えられる手段は次の通りです。


財産を正確に把握してもらう=エンディングノート遺言書
関係性の薄い親族への相続を回避したい場合=遺言書
お世話になった人・法人へ財産を譲りたい場合=遺言書


エンディングノートに法的効力はありませんが、自身の死後にしてほしい手続きを記載したり、スマホ代など定期課金のリストを記載し支払いを止めてもらったりということには非常に有効です。

一方、有効な遺言書には法的効力がありますので、遺留分を侵害していない限り譲りたい人を指定して確実に財産を受け継いでもらうことが可能です。
ただし、いくら有効な遺言書を作成したとしても「亡くなった事実」が遺言執行者を含む誰にも知られていなかったとしたら、せっかく作成した遺言も執行されることはありません。


亡くなったことは誰が知らせる? 


例えば遺言書に「○○に全財産を相続させる(遺贈する)」という記載があったとします。
遺言書は遺言者(遺言書を書いた人)が亡くなった後、公正証書であれば家庭裁判所による検認不要で記載内容に基づいて執行され、自筆証書遺言であれば家庭裁判所での検認を経て、有効な内容であると認められれば公正証書と同様、記載内容に基づいて執行されます。

つまり、誰かが遺言書を見つけないと手続きはスタートしないのです。
一般的に年齢を重ねるほど様々なコミュニティから引退することが多いですし、先の例に登場した関係性の薄い親族と頻繁に連絡を取り合うといったことも少ないでしょう。


施設へ入所している場合などはスタッフが対応してくれる場合もあると思いますが、「遺言書がある」という事実を知るか、遺言書そのものを見つけなければ、やはり手続きは進みません。

警備会社等が提供している高齢者見守りサービスなども、体調急変時に駆けつけてくれたり、救急車を呼んでくれたりといったことはしてくれますが、遺言書の有無までは把握していないことでしょう。


おひとりさまにとって「亡くなったことを知らせる人」を確保しておくことは、遺言書の作成と同じくらい重要なことであると考えます。
信頼できる友人や後輩・専門家など人によって様々だと思いますが、日頃から「頼れる誰か」を確保することこそが、“おひとりさま相続”を円満に進めることだと考えます。





自筆証書遺言保管制度で通知されるように 


「頼れる誰か」を確保することはそう簡単には行かないケースもあることでしょう。そこで国も新しい制度をスタートさせました。
以前、当ブログでも解説した自筆証書遺言の法務局保管制度「死亡時の通知」という仕組みが設けられたのです。


遺言者の死亡の事実を把握することが可能となる仕組みによって,遺言書保管官が遺言者の死亡の事実を確認した場合には,あらかじめ遺言者が指定した者に対して,遺言書が保管されている旨を通知することとしました。この死亡時の通知については,令和3年度以降頃から本格的に運用を開始することとしています。
 この通知は,希望する遺言者のみについて実施することとし,遺言書の保管の申請時に,次に掲げる様式により,同意事項に同意し,通知対象者の指定をしていただくこととなります。
 通知対象者は,遺言者の推定相続人並びに遺言書に記載された受遺者等及び遺言執行者等から1名を指定することとなります。まずは,その方に遺言書が保管されている事実が伝われば,その他の相続人等にも確実にそのことが伝わると思われるような立場の方や,確実に保管の事実を伝えたい方を選択していただくことをおすすめします。
出典:法務省HP(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00012.html)


事前に指定した1名に亡くなったことを通知してくれる制度です。
令和3年度以降から本格運用開始ということですので、今後本制度によって「亡くなった事実を誰も知らない」ということの減少が期待されます。

今まで以上に“確実”に“譲りたい誰か”へ財産を渡すことが出来るようになりますので、自筆証書遺言は今後ますます活用されていくことでしょう。
ただし、有効な書式であるということが大前提ですので、自筆証書遺言の書き方に不安がある場合は専門家へ相談しながら作成することをおススメいたします。


今日からできる対策 


「自分はまだ若いから遺言書はちょっと…」
このように思う方もいらっしゃることでしょう。
そんな方こそぜひ始めていただきたい“おひとりさま相続”対策として、エンディングノート緊急連絡先メモというものがございます。

“おひとりさま”だからこそエンディングノートに書いておいていただきたい事柄として次のようなものが挙げられます。


・所有PCやスマホのログインパスワード
・所有している金融機関の口座と連絡先
・所有している現金、有価証券以外の財産のリスト
・加入している生命保険の種類と保険会社のリスト
定期課金(光熱費や通信費、Webサービスなど)のリストと解約連絡先
亡くなったことを知らせる人のリスト
・お葬式の方法
・私物の処分方法(誰かに渡す場合は何を誰に渡すか?)
・事業を行っている場合はその清算方法


配偶者、お子さん、兄弟姉妹のいずれも存在しない場合、遺産は遺言書で指定がある場合や特別縁故者がいる場合を除き最終的には国に帰属します。
しかし、先述の通り現代では財産の把握や定期的な支払いの把握が難しくなってきていますので、それらをリスト化しておけば死後の事務手続きで迷惑をかけることも少ないでしょう。

実際に私の知人で毎年エンディングノートを更新し、信頼できる友達へ預けている方がいますが、そこまではせずとも上記を一度整理してエンディングノートを作成し、「頼れる誰か」へエンディングノートの存在を知らせておくことは“若いおひとりさま”にとって有効な手段であると言えるでしょう。


また、緊急連絡先メモの存在も重要であると考えます。連絡先リストはスマホのアドレス帳を活用している方がほとんどだと思いますが、多くの場合でパスワードをかけていることと思います。いち早く連絡先を知りたいのにパスワードが分からず連絡できないという事態を防ぐため、紙で緊急連絡先を残しておくことは重要です。

「遺言書は○○歳になったら作りましょう」という具体的な目安はありませんが、まだ作成するのに抵抗がある場合は、エンディングノートと緊急連絡先メモだけは作成しておくことで、万一の際遺された大切な方々が困らずに済みますし、自身の希望も叶えられる可能性は何の意思表示もしていない場合と比べると高くなると言えるでしょう。





今回のまとめ 


英国では2018年1月に「孤独担当相」が新設されました。日本では担当相の設置とまではいかないまでも、「孤立・孤独」は英国同様社会問題化しています。家族がいても孤立・孤独を感じる方もいらっしゃると思いますが、今回解説した“おひとりさま”であれば尚更孤立・孤独を感じてしまうのかもしれません。


コロナ禍によって人の繋がりが急速にバーチャル化している現代において、「頼れる誰か」を確保することは今後ますます難しくなっていくことが予想されます。
だからと言って、心から信頼できない人と無理に交友関係を拡げることは無いですが、ある程度の距離を保ち信頼できる人と狭く深く付き合っていくことが、「個」が重視される時代を生き抜いていく手段なのかもしれないと個人的には感じています。


決して“おひとりさま”だから「自分の死後は関係ないや」と思わずに、今からできる対策を少しずつ進め、自分の生きてきた軌跡を残し、財産を譲りたい方がいれば確実な方法で譲り、最後まで自分らしい生き方を実現して行っていただければ幸いです。


本日も最後までお読みいただきありがとうございました。





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