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2021/12/31
脱ハンコと登記
こんにちは!
司法書士法人府中けやき共同事務所の秋池です。
2021年も今日で終わりを迎えます。来年こそコロナが明けて自由にどこへでも行けるようになってほしいものですね。
さて、そんな今年最後のブログですが『脱ハンコと登記』と題し、未だに紙ベースでのやり取りが多い登記関係の手続きは、現状どこまで電子化しているのか? という点を解説して行きたいと思います。
登記とも関連の深い税金関係では確定申告でもおなじみのeーTaxが普及しておりますが、果たして登記はどこまで進んでいるのでしょうか。分かりやすく解説して行きますので、どうぞ最後までお付き合いください。
そもそもハンコってなんで必要なのか?
現在も行われているかはわかりませんが、私の時代は中学校の卒業式で印鑑をいただく習慣がありました。
ほとんどの方が高校へ進学することにはなりますが、義務教育自体は中学校で終了です。
つまり、中学校を卒業した段階で社会人として歩みだす方もいらっしゃるわけですので、そのために必要なものとして「印鑑」が卒業式で配られたというわけです。
初めて自分の印鑑を手にした時は何だか大人の仲間入りをしたような気持になりましたが、そもそも印鑑はなぜ必要とされているのでしょうか?
国としては下記のような理由で印鑑は必要であると述べています。
・民事裁判において、私文書が作成者の認識等を示したものとして証拠(書証)になるためには、その文書の作成者とされている人(作成名義人)が真実の作成者であると相手方が認めるか、そのことが立証されることが必要であり、これが認められる文書は、「真正に成立した」ものとして取り扱われる。民事裁判上、真正に成立した文書は、その中に作成名義人の認識等が示されているという意味での証拠力(これを「形式的証拠力」という。)
が認められる。
・ 民訴法第228 条第4項には、「私文書は、本人[中略]の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」という規定がある。この規定により、契約書等の私文書の中に、本人の押印(本人の意思に基づく押印と解釈されている。)があれば、その私文書は、本人が作成したものであることが推定される。
・ この民訴法第228 条第4項の規定の内容を簡単に言い換えれば、裁判所は、ある人が自分の押印をした文書は、特に疑わしい事情がない限り、真正に成立したものとして、証拠に使ってよいという意味である。そのため、文書の真正が裁判上争いとなった場合でも、本人による押印があれば、証明の負担が軽減されることになる。
法務省HPより引用(https://www.moj.go.jp/content/001322410.pdf)
難しい表現が多いので要約すると、
「契約などで揉め事が発生した時に、当事者が納得して作成したものかどうか判断する基準として、本人の意思による署名か押印があれば、疑わしい事情がない限りそれは裁判上でも証拠として認めます」
ということになります。
本人が「契約します」などの意思表示をする際に、ハンコを押すことによって「確かに私の意思で契約しました」という証拠になりますので、ハンコは重要なものとされてきました。
しかし、ここ最近では脱ハンコという流れが官民で広がってきています。この流れを受けて登記の世界でも脱ハンコが叫ばれるようになってきました。詳しく見て行きましょう。
登記の世界はまだまだハンコが必要⁉
登記の世界での押印規定見直しは、商業登記・成年後見関係・戸籍関係・出入国在留管理関係など多岐に渡って見直されておりますが、
今回は会社関係の登記である商業登記について見て行きます。
多くの方は会社を設立する際に、上図の様な印鑑セット(角印・実印・銀行印)を作ることになりますが、現在ではオンラインで登記申請した場合に限り、印鑑届書の提出が任意になりました。
つまり、会社のハンコを登録しなくとも会社の設立が出来るようになったというわけです。
しかし、いくら任意になったとはいえ、金融機関で融資を受ける際や行政へ許認可の申請をする際には押印を求められることがまだまだ多く存在しますので、実務上は会社のハンコを登録する必要があると言えるでしょう。
押印規定が見直されたもの
・登記簿の附属書類の閲覧の申請書
・事業を廃止していない旨の届出
・再使用証明申出書
・株主リスト
・契印(法令上の根拠があるものを除き,その有無について審査を要しない)
・訂正印(法令上の根拠があるものを除き,契印の有無について審査を要しない)
(令和3年1月29日付け法務省民商第10号民事局長通達より抜粋)
上記は法務省より通達された押印の必要がない書類の一覧となりますが、その他商業登記規則・商業登記法によって押印根拠のない書類も存在しますので、会社設立をお考えの方で詳しく知っておきたいという場合はお問い合わせください。
実務上はどうなのか?
いくつかの書類は確かに「脱ハンコ」となりましたが、実務上は委任状やその他の添付書面に関しても従来通り押印をお願いしているのが現状です。
司法書士としては、お客様から依頼された登記を迅速に間違いなく行う必要がありますし、お客様との意思確認の一環としても押印は必要と考えておりますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
今後はどうなっていくのか?
商業登記に限らず、不動産登記でも脱ハンコの流れは進んでいます。
所有権保存登記、土地分筆登記、建物滅失登記については実印の押印は必要ありません。
おそらく今後は電子取引や各種サービスの進化に応じて、真正な登記・適正な取引が担保できるのであれば段階的に「脱ハンコ」は進んで行くことが予想されますが、完全にハンコのいらない登記というのはまだまだ先のことになるのではないかと考えます。
確かに現在では電子署名が普及し、登記の世界でも経営者のマイナンバーカードが電子署名として使用出来たりもします。
カードリーダーさえあればすべて解決できそうな気もしますが、会社規模が大きい場合や関係者の意思決定に時間がかかる場合など、すべてを完全電子化するのは現実的ではありません。
何故かというと、ハンコは押せばいいだけなのに対し、電子署名や電子契約サービスは導入するのにもコストがかかりますし、「パソコンとか苦手…」という苦手意識を持つ方は中々「脱ハンコ」に動こうとは思わないことでしょう。
税金の世界では令和4年より電子帳簿保存法というものが改正され、PDF等データで届いた請求書や領収書はデータで保存するように改められましたが、登記の世界ではデータ+紙という状況がしばらく続くことと思います。
とは言え、登記の世界もいずれは「脱ハンコ」になっていくことは予想できますので、経営者の方は今のうちから電子署名や電子契約サービスについて情報収集しておくことをおススメ致します。
今回のまとめ
「脱ハンコ」は登記の世界でも進んではいますが、実務上はまだまだ押印が必要になってくる場合が非常に多いです。
個人的には「脱ハンコ」の最後の砦が登記なのではないかと考えます。
そもそも「登記」は利害関係者や権利者を保護するためにありますので、「本当に本人の意思でやったの?」「本当にこの人が権利者なの?」ということを証明する部分からハンコを失くすのは時間がかかるのではないでしょうか。
さて、私事ではありますが、2022年より秋池は諸般の事情により在宅ワークへ切り替えさせていただきます。
そのため、事務所への出勤は不定期となり、当ブログもしばらくお休みとさせていただきます。
当ブログを楽しみにしていただいている方には大変申し訳ございませんが、今後も不定期で更新してまいりますので、2022年も当事務所・当ブログをよろしくお願い致します。
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