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府中けやき共同事務所

2020/12/31

数次相続にご注意ください

こんにちは!

いよいよ今年も残すところ僅かとなりました。仕事柄、完全にリモートにすることは難しいのですが、それでもお客様と直接会ってお話する機会は開業以来一番少ない一年でした。
これより弊所は年末年始のお休み期間に入ります。まずは、このような状況下で無事に年越しを迎えられることに感謝しつつ、自宅でゆっくり過ごそうと思っています。

さて、そんな今年最後のブログでは「数次相続」を取り上げます。
亡くなった方の遺産分割が完了する前に、遺産を貰うことのできる権利を持っている人まで亡くなってしまったらどうなるのか? 

このような状態を「数次相続」と呼びますが、具体的にどのように遺産は分割されるのか? といった基本的なところから解説してまいりますので、どうぞ最後までお付き合いください。




数次相続って何?

相続が発生した場合(誰かが亡くなった場合)遺言書が無ければ、相続人間での話し合い(遺産分割協議)によって遺産は分けられます。
前回のブログで解説した法定相続分は分け方の目安となりますので、多くの方が法定相続分の通りに遺産を受け取ることになるわけですが、遺産分割協議が終わらないうちに相続人の一人が亡くなってしまった場合は、今回解説する「数次相続」となり、相続人間の関係性によって揉める要素を多く含む相続となってしまうことがよくあります。


「そんな後を追うように亡くなる事ってレアケースでしょ?」
と思う方もいらっしゃるかもしれません。確かにレアケースであることに間違いはありませんが、数次相続発生でのよくあるケースとして、前世代の相続手続きをしていなかったことが原因で発生するというものがあります。


相続手続きの代表的なものとして相続税の申告と納税がありますが、相続税が課税されるくらいの財産をお持ちの方であれば、税理士や弁護士に相談し納税を行っていると思います。なぜなら、相続税の申告と納税は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっているためです。しかし、納税に期限はありますが、遺産分割協議に期限はありません。そのため、次のようなケースも存在します。


「おじいちゃんが亡くなったけど、預金は無いし土地もそんなに価値のある物じゃないからほっといていいか…。固定資産税は自分で払っているし、住み続けるのに特に支障はないや…」
このような状態で次の世代が亡くなると数次相続の発生となるのです。


上記のように放置していた場合でなくとも、一般的に高齢で亡くなった方に配偶者がいた場合、亡くなった方同様に高齢であることから「おじいちゃんの遺産について話し合いが終わる前に、おばあちゃんも亡くなってしまった…」というケースは大いにあり得ることです。
このように数次相続はレアケースと言いつつ、意外と発生するリスクを秘めているものなのです。


さらに、「おじいちゃんもおばあちゃんも亡くなって、誰も住まなくなったし、空き家のままにしても仕方ないから売却しよう!」という状況になったとしても、相続登記がされていないとことが発覚し、あわてて専門家に相談する…というのもよくある話です。相続登記を放置すればするほど、関係してくる人の数は増えていく可能性が高まりますので、スムーズな売却というのも難しくなってしまいます。

関係してくる人の数が増えるということは、この後解説する揉める要素の一因ともなります。なぜ揉める要素となるのか詳しく見て行きましょう。


数次相続はなぜ揉める要素があるのか?

ケース①

 


上図のような家族がいたとします。父親が亡くなり相続が発生しましたが、遺産分割協議が終わらないうちに母も亡くなってしまったとします。
遺された子どもたちが手にする遺産は法定相続分の通りに分けるとすると次のようになります。

一次相続(父の遺産)
母は遺産の1/2  
長男は遺産の1/4
次男は遺産の1/4

上記のように遺産分割が行われる予定でしたが、協議が終了する前に母が亡くなってしまったため、二次相続も発生しています。

二次相続(母の遺産 ※父の遺産の法定相続分)
長男は遺産の1/4
次男は遺産の1/4

最終的に両親の遺産は兄弟二人で半分ずつ分けることになります。このような事例であれば、兄弟仲さえ良ければ揉めるケースは少ないと言えるでしょう。
もっとも、相続の手続き上は、父から直接相続した分と、母の法定相続分を更に相続した分について二回遺産分割協議を行うことになるので、通常の相続に比べ手間も費用もかかってしまいます。

特に不動産の所有権移転は特定の条件以外、中間省略登記(一時相続の登記を省略)をすることが出来ませんのでご注意いただければと思います。
続いて少し関係性が複雑になるケースをご紹介します。


ケース②


 

先のケースと違い、父の遺産分割協議中に長男が亡くなってしまったとします。
この場合、父の遺産分割協議に長男の配偶者と長男の子が登場することになりますので、揉める要素は大いにあり得ると言えるでしょう。

父の遺産をそれぞれどのような割合で相続することが出来るのか? 法定相続分通りに分割すると次のようになります。

母:父の遺産の1/2
次男:父の遺産の1/4

長男の配偶者:義父の遺産の1/8
長男の子:義父の遺産の1/8

以上のように分けられますが、兄の配偶者が自分の父の遺産を相続することになる次男はどのような気持ちになるでしょうか?
もちろん、スムーズに事が進み遺産分割協議が完了できるケースも多くあると思いますが、日頃の関係性が大いに影響してくることでしょう。


また、今回のケースは二次相続までを取り上げましたが、三次・四次と多くの関係者を巻き込む相続が無いとは言えません。関係する人が多くなればなるほど、その方々の関係性は薄いものとなるでしょうから、揉める要素はさらに広がっていく可能性がありますし、相続登記などの手続きも複雑になり、時間もお金も通常の相続と比べ多く費やすことになってしまいます。


数次相続の場合、特に重要なのは「誰が相続人なのかをすべて把握する」ということです。先に述べた三次・四次となってしまった場合であれば、一度も会ったことのない人とお金について話し合う必要も出てくることでしょう。そのような場合は専門家へ相談・依頼するという手段もありますので、私たち司法書士や弁護士へご相談されることをおススメいたします。


代襲相続との違い


 

相続に詳しい方であれば「数次相続って要は代襲相続でしょ?」と思うかもしれません。しかし、数次相続と代襲相続は異なります。
上図をご覧ください。先ほどの例と違い、長男は父が亡くなる前にすでに亡くなってしまっています。この場合は代襲相続となり相続人は以下の通りです。

母・次男・長男の子

数次相続では長男の配偶者も相続人となりましたが、代襲相続の場合は直系のみですので、配偶者は相続人となることが出来ません。
したがって、亡くなった父の遺産を法定相続分通りに分割すると以下のように分けられます。

母:遺産の1/2
次男:遺産の1/4
長男の子:遺産の1/4


数次相続は1.被相続人の死亡(上図の父)の後、遺産分割協議の終わらないうちに2.相続人(上図の長男)が死亡という順番であるのに対し、
代襲相続は1.相続人の死亡の後、2.被相続人の死亡という点で異なっています。お間違いの無い様にご注意ください。


数次相続と相続放棄


 
相続放棄という言葉は聞いたことのある方も多いと思います。
先ほどの例を再び取り上げて解説していきますが、長男の配偶者目線で図をご覧ください。


「義理の父が亡くなって、時間を置かずに自分の夫(長男)も亡くなった…義父は資産家だったので遺産を相続したいけど、夫(長男)の遺産はマイナスが多いようなので相続放棄したい」


これは不可能です。
なぜなら、二次相続である夫(長男)の遺産を放棄してしまうと、自動的に一次相続である、義父の遺産も放棄することになってしまうためです。
反対に「義父の遺産も夫の遺産も放棄する」という選択は可能です。これは長男の子も同様となります。


他方、相続するかどうか決めようとしているうちに亡くなってしまった…というケースも存在します。
上図のケースで言うと、長男が父の相続を承認するか放棄するか決めようとしている内に亡くなった場合が当たりますが、
この状態を再転相続と呼び、先ほどとは逆のパターンとなる


「義理の父が亡くなって、自分の夫も亡くなった…義父の遺産は放棄したいけど、夫の遺産は相続したい」


ということも可能となります。
なぜなら、承認も放棄もしていない状態で長男(夫)が亡くなりましたので、長男の配偶者と子は1.義父の相続2.夫(父)の相続の2つの相続について承認するか放棄するかの選択権を持っているわけです。
ただし、相続放棄を選択するためには


相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。(民法915条1項)


という決まりが民法にはありますので、3カ月以内に答えを出さなければなりません。
再転相続に該当する場合は、どのような選択が遺された自分たちにとってプラスとなるのか、専門家も交えて早急に答えを出す必要があると言えるでしょう。



今回のまとめ

数次相続は平時であればレアケースと言えるかもしれません。今回のブログをお読みになり、初めて知ったという方も多いことでしょう。
しかし、コロナ禍の現状では入院中、施設入居中などといった方と簡単に会うことは難しくなっているという事実があります。


「おじいちゃんが亡くなったので遺産についておばあちゃんにも話をしたいけど会いに行けない」という事態が続き、「とりあえずコロナが収まってから」などと言っている内に、おばあちゃんの体調が悪化した。となれば数次相続発生のリスクは高まっていきます。


一般的に数次相続となった場合、得をする方はほとんどいません。
むしろ、手間とお金と場合によっては普段ほとんど会わない人とお金に関する話をしなければなりません。

これを回避するためには、相続が発生した場合素早く対応し、遺言書が無い場合には遺産分割協議を円満に終わらせるしか方法がありません。


私の知人で地方在住の方がいらっしゃいますが、その方の地元だと「土地だけだからみんな集まるお盆か正月に話せばいいか…」ということも多くあるそうです。
財産の多寡にかかわらず、相続発生時には「誰がどんな手続きをどこで誰とやるか」をあらかじめ決めておき、いざ相続が発生してしまった場合でも慌てることなく、冷静に手続きを進めて行けることが理想的です。

その際に我々専門家の手助けが必要であれば、全力でお手伝いさせていただきますのでお気軽にご相談ください。


本年も当ブログをお読みいただきありがとうございました。
良いお年をお迎えください。


司法書士法人府中けやき共同事務所

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