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2021/02/28
相続登記の義務化
こんにちは!
司法書士法人府中けやき共同事務所の秋池です。
2月11日の朝刊に「相続登記の義務化」について記事が出ていましたがご覧になった方はいらっしゃるでしょうか?
以前から「相続登記の義務化」について業界内では盛んに話が出ていましたが、新聞報道によると今国会での成立を目指し、早ければ2023年度より施行となるそうです。
そこで今月のブログでは「相続登記の義務化」についてなぜ必要なのか?
相続登記を行わないとどんなデメリットが存在するのか?
といった点について解説してまいります。
特に自宅以外の不動産をお持ちの方や農地をお持ちの方にはぜひ知っておいていただきたい知識となりますので、どうぞ最後までお付き合いよろしくお願い致します。
なぜ相続登記は「義務化」されるのか?
・相続人の間で揉め事が無い
・相続税を納付するほどの資産家でもない
・不動産の価値が低い
・遺産分割協議で揉めてしまいまとまらない
いずれも相続登記を行わないよくある理由です。
現在の法律では相続登記を行わなかったとしても罰則はありませんし、登記を行うということは費用も発生しますので、「めんどくさいことはいいや…」と思ってしまう方も少なからず存在するのです。
相続登記を放置したままの不動産に居住者や管理人がいなくなってしまうと、最終的に所有者不明の家や土地となってしまい、現在では社会問題(空き家問題)としても取り上げられておりますので、国としても亡くなった方の名義のままにしてある不動産は現在誰の持ち物になっているか?
を明確にすべく「相続登記の義務化」の法整備を開始したというわけです。
国会での審議次第ですが、相続登記が義務化されると、登記を行わなかった場合罰則(過料)が課されることも検討されているようですので、相続登記を行っていない不動産をお持ちの方は早めに動かれたほうがよろしいかと考えます。
相続登記の手続き
上図は所有者である知人に許可を得て実際の登記簿より個人情報に係わる個所をマスキングしたものです。
中ほどをご覧いただくと、「昭和53年9月7日相続」と記載があります。その下は個人情報であるためマスキングしてありますが、実際は所有者の住所・名前が記載されますので、ここに記載されている方がすでに亡くなっていた場合は相続登記が必要な不動産であると言えます。
本事例の場合、現所有者は先代の所有者が亡くなった際に相続登記をしているため「昭和53年9月7日相続」と記載されていますが、実際の相続登記は下記のような流れで進んでいきます。
①遺言書の有無を確認
遺言書があった場合は内容に従って登記を行い、無い場合は相続人の間で遺産分割協議を行います。
仮に遺産分割協議で揉めてしまった場合は弁護士といった専門家へ早期に相談されることをおススメいたします。
②相続登記の申請
亡くなった方の名義から相続した方の名義に変える手続きを行います。
なお、相続登記の際は登録免許税として1000分の4(0.4%)が不動産の固定資産評価額に対して課税されますので、自宅の土地と建物といった場合はそれぞれに税金が発生します。
※土地の相続登記は、例外として登録免許税が免税となるケースもございます
租税特別措置法第84条の2の3第1項
(亡くなっている方を名義人とする場合:令和3年(2021年)3月31日まで)
登録免許税法5条10号(登記簿上、墳墓地となっている場合)
大まかに分けると上記のようになりますが、実際にはこれに付随して下記の書類も法務局に原本の提出が必要となります。
※配偶者及び(成人した)子が法定相続人の場合の必要書類です。他のケースや遺言書がある場合は、必要書類が異なります。
・遺産分割協議書
※遺言書がない場合、または遺言書と異なる内容で相続登記を行う場合。司法書士が書式を作成することも可能です。
・亡くなった方の出生から死亡までの戸籍(改製原戸籍・除籍謄本)一式
・亡くなった方の住民票の除票(本籍地入り)または戸籍の附票
・相続人全員の現在戸籍謄本(または抄本)
※亡くなった方の戸籍上に記載がある方(妻など)については、別に取得する必要はありません。被相続人が亡くなった日より後に発行されたものが必要です。
・相続人全員の印鑑証明書(有効期限なし)
・不動産を取得する相続人の住民票(有効期限なし)
・対象不動産の固定資産評価証明書(相続登記を行う時点における年度のもの)
不動産を相続される方がご自身で行うことも可能ですが、書類収集・作成の手間や記載ミスによる訂正などを考慮すると、司法書士に依頼した方がスマートに進めることが出来ると言えるでしょう。
相続登記をしないことによるデメリット
先述の通り確かに相続登記には手間もお金もかかります。しかし、放置してしまうことによりデメリットも存在するのです。代表的なデメリットとして、売却不可・担保設定不可・他の相続人による持ち分の売却等といったことが挙げられます。具体的に見て行きましょう。
・売却出来ない。担保設定も出来ない。
相続登記をしていない(名義の変わっていない)不動産を売却することは出来ません。また、それを担保にお金を借りることも不可能です。
売却時や担保設定時に相続登記を行うというケースも存在しますが、何世代も経ってしまっている場合などは権利関係もその分複雑になってきますので、相続登記における登場人物が増えてきてしまい、ハンコ一つもらうのにも苦労するケースは非常に多いです。
・他の相続人による持ち分の売却
上図は亡くなった父親の遺産である不動産を法定相続分通りに分割した場合の持ち分です。
仮に遺産分割協議で特に揉めることも無く、長男がすべてを相続することになったとしても、登記をしていなければ自己の相続分を超える部分について第三者に権利を主張することは出来ません。つまり、第三者から見れば不動産は長男単独のものでは無く、相続人全員で共有している状態とみられてしまうのです。
もし、次男が借金を抱えてしまい、差し押さえを受けるような事態になったとしたら持ち分である1/6は差し押さえられてしまいます。
すると全く知らない他人と不動産を共有することになりますので、不動産のすべてを相続するはずであった長男は、差し押さえられた持ち分を買い取ることになり、使わなくてもいいお金を使うことになってしまいます。
また、持ち分を買い取らなかったとしても、権利関係が複雑になっていることに変わりはありませんので、次に相続が発生した場合手続きがスムーズに進まない可能性も存在します。
今回の例では不動産を一筆に限定していますが、自宅以外に不動産をお持ちの方は放置すればするほど上記のようなリスクを抱えることになりますので、ご注意いただければと思います。
・特に農地にはご注意
農地に関しては宅地と違い相続時に農業委員会への届け出が必要となります。
届け出には期限もあり、権利の取得を知った日から概ね10か月以内です。届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合は10万円以下の過料が科されることがありますので、農地の相続に関しては農業委員会への届け出のみ、すでに義務化されているとご認識ください。
また、相続された方が該当農地で農業を行わない場合は、売却・賃貸といった手段を取ることが多いですが、市町村の農業委員会へ許可を取る必要もあります。さらに農地には勝手に建物を建てることも出来ませんので、やはり農業委員会へ農転(農地以外の用途に転用)の手続きを行うことになります。
しかし、地方を中心に耕作放棄地が多く存在することも事実です。
農地を貸すと言っても、借り手が表れなければ自分で最低限の管理をしていくほかありませんし、売却もまた同様です。
いずれの場合でも農地の利活用に困った場合はまず農業委員会へ相談されることをおススメいたします。
耕作者とのマッチングや、利用権設定(賃貸借契約のようなものです)のお手伝いなど、多様な解決方法を提案してくれることでしょう。なお、農地の相続に関してはまた改めて詳しく解説させていただく予定です。
今回のまとめ
相続登記の義務化は所有者不明不動産の利活用を促進することになると思いますが、同時に不動産を相続される方の手間が増えたということにもなります。
しかし、手間だからといって放置してしまい権利関係が複雑になってしまうと、それを解消するために当初惜しんだ何倍もの手間と費用が発生することもあるのです。仕事柄、複雑に入り組んだ権利関係の不動産はよく見ますが、結果的に解決した後も何らかのしこりが残ってしまう方々も多く存在しますし、何より心が非常に疲れてしまいます。
義務化になりそうだから行うのではなく、当ブログ読者の方には「不動産を相続した場合は登記もセットで行う」という認識を持っていただければ幸いです。
その際のお手伝いは我々司法書士が行いますので、相続登記でお悩みの場合は何なりとご相談ください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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