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2021/05/31
相続登記の義務化が成立しました
こんにちは!
司法書士法人府中けやき共同事務所の秋池です。
以前当ブログでもお伝えした「相続登記の義務化」を含む、民法等の一部を改正する法律・相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律が4月21日に国会で成立しました。法律のスタートとなる施行は公布日の令和3年4月28日より2年以内の政令で定める日となります。
これを踏まえ今月は“何がいつどのように変わっていくのか?”について現時点で公表されている情報を元に分かりやすく解説してまいります。
不動産を相続することになりそうな方は特に知っておいていただきたい情報ですので、どうぞ最後までお付き合いください。
相続登記の義務化
相続登記についてはすでに当ブログでも解説させていただきましたが、義務化に伴い相続によって不動産を取得した人は、その取得を知った日から3年以内に名義変更登記を行わないと10万円以下の過料の対象となります。これは相続だけではなく遺言による遺贈(相続人に対する遺贈に限る)も同様です。
しかし、現実にはスムーズに遺産分割が進まないケースも多く存在します。そのような場合に対応するため相続人申告登記というものが新設されました。
上図の様に相続人が3人存在し、自宅の所有者を誰にするか早期に決着しなかった場合は、相続人であることを申告すれば、話し合いがまとまり所有者が確定するまで相続登記を保留することが出来るようになりました。申告は上図の様に誰か一人だけでも実行可能です。申告を受けた法務局(登記官)は申告をしてきた人の住所と氏名を登記簿に記録してくれます。
要するに「相続がスタートしましたよ」ということと、「登記簿に所有者として名前が載っている人の相続人です」という二つのことを法務局(登記官)に申し出ることが出来るようになるわけです。
ただし、権利が移ったことを記録してくれるわけではありません。あくまで登記簿上の所有者が亡くなったということを表しているだけに過ぎませんので、話し合いがまとまった後には改めて相続登記を行う必要があります。
相続義務化のスタートは冒頭申し上げた公布日の令和3年4月28日より2年以内ではなく3年以内となります。まだ時間があることは事実ですが、相続登記を行っていない不動産をお持ちの方は今のうちから動かれることをおススメいたします。
所有不動産記録証明制度・死亡情報の記録
相続人申告登記以外に新設されるものとして所有不動産記録証明制度というものもございます。これは特定の人の名義となっている不動産の一覧を証明書として発行してくれる制度です。この制度によって「先代名義の土地がどこにどのくらいの面積があるかわからず相続登記したくても出来ない…」という事態を防ぐことが可能となります。
また、法務局では住基ネットなどから登記名義人の死亡等の情報を取得し、職権で登記に表示することも可能となりました。
これらの制度改革により所有者不明土地は減っていくことが期待されますが、義務化されたわけですので相続人への負担が増えてしまうことも事実です。そこで、登録免許税の負担軽減の要望が予定されています。コチラは決定事項ではありませんが、税負担が軽減されることは相続人にとって喜ばしいことになりますので、実現されることを望みます。
住所変更登記の義務化
所有者の住所変更も義務化されることになりました。個人・法人問わず住所・氏名の変更をした際は2年以内の届け出が必要となり、怠ると5万円以下の科料に処せられる可能性もあります。
先述の通り法務局でも住基ネットの情報を共有することになりましたので、住所変更等の事実を法務局が確認した際には住所・氏名の変更登記が可能となります。ただし、個人に関しては自動的に変更されず、法務局からの意向確認と本人からの申し出が必要です。
住所変更の義務化で特にご注意いただきたいのは都市部に賃貸で居住し、実家の土地を相続した方となります。賃貸からマイホームへの引っ越し等で、自身や家族の住所変更は忘れることなく行うと思いますが、実家の土地の所有者住所変更まではなかなか気が回らないと思いますので、ぜひ覚えておいていただきたい改正点となります。
住所変更義務化関係のスタート(施行)は公布日の令和3年4月28日より5年以内です。
自分で管理しきれない土地は国に任せられる?
利用価値や評価額の低い土地を相続した場合、管理がおろそかになりやすいというのはよくある話です。先代が遺してくれた財産ですので、出来る範囲で適切に管理して行きたいものですが限界もあることでしょう。
そこで新たに「相続土地国家帰属法」という法律が制定されました。
管理しきれず放置されたままの土地は相続登記を含む権利関係の手続きも放置され、最終的に所有者不明の土地となってしまうことが多かったのですが、この法律により管理しきれない土地を国の物にすることが可能となります。
ただし、どんな土地でも出来るわけではありません。
・建物や通常の管理又は処分を阻害する工作物等がある土地
・土壌汚染や埋設物がある土地
・崖がある土地
・境界が明確ではない土地
・権利関係に争いがある土地
・担保権等が設定されている土地
・通路など他人によって使用される土地
現在これらの土地は国に帰属できない旨が法務局より発表されています。
出典:法務局HP(http://www.moj.go.jp/content/001347356.pdf)
また、無料で国に引き取ってもらえるというものでは無く、土地の種類によって金額は異なりますが、10年分の管理費を前もって支払う必要もありますし、国としても無制限に引き受けることは不可能ですので、今後制定される政省令で規定が整備されることとなっています。
「お金さえ払えば必ず国が何とかしてくれる」というわけではありませんが、管理できない相応の事情がある場合は利用を検討してみるのも良いでしょう。相続土地国家帰属法のスタート(施行)は公布日の令和3年4月28日より2年以内です。
制度のポイントと施行日・民法の改正点
相続登記義務化のポイントと法律のスタート(施行日)をまとめます。
・相続で不動産の取得を知った日から3年以内に名義変更の登記を行わないと10万円以下の過料。スタートは令和3年4月28日から3年以内。
・住所変更をする際は2年以内に所有する不動産の住所変更登記も忘れずに! 怠ると5万円以下の過料。スタートは令和3年4月28日から5年以内。
・遺産分割協議がまとまらない時は法定相続人の誰かが法務局に申告することで所有者が亡くなったという事実を記録できる。ただし、権利が移ったことにはならない。
・遺産分割協議がまとまり、誰の所有になるのかが決まった場合は必ず相続登記を行う。
・管理することが難しい土地を相続した場合は土地の状態と国の審査次第で管理費を支払えば国の物にすることも可能になる。スタートは令和3年4月28日から2年以内。
相続登記に関連する民法の改正事項として、特別受益と寄与分について相続開始から10年を経過すると主張できなくなります。(新設された第九百四条の三)
つまり「過去に亡くなった人から特定の相続人に対して贈与が行われていたから遺産の取り分を減らしてほしい」や「亡くなった人の介護に従事していたから自分の取り分を増やしてほしい」といった主張が10年経過すると出来なくなるということです。
遺産分割協議自体に期間制限はありませんので、相続人全員が納得するのであれば10年経過後でも特別受益や寄与分を加味した分割割合での相続も可能です。
今回の改正は揉めてしまった場合10年経過したら特別受益と寄与分の主張は出来ませんよ。ということですので、遺産分割協議がまとまらず所有者不明土地を生まないための政策でもありますね。
今回のまとめ
法改正により相続登記が進み、所有者不明土地問題の解決へ繋がっていくことになると思いますが、先述の通り相続人の負担が増えることも確かです。
相続と聞くと相続税のことや預金の凍結解除、生命保険の請求などはすぐに行動へ移す方が多いですが、「登記」のこととなると後回しにしてしまう方が多いように感じます。
確かに面倒くさいイメージはあるかもしれませんが、不動産の名義変更を行うということは、先代から引き継いだ財産を守ることにもつながりますので、相続登記でお困りの場合はどうぞお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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