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府中けやき共同事務所

2021/07/31

生命保険契約照会制度

こんにちは!


東京オリンピックが開幕し日本のメダル獲得が続いていることは喜ばしいですが、一方でコロナの新規感染者も増え続けているという状態です。
ワクチン接種が進んでいるとはいえまだまだ“自粛” が続いていくことになりそうです。

さて、今月のブログは「高齢者の財産を次世代がどのように把握するか?」をテーマに、7月より新たにスタートした「生命保険契約照会制度」について分かりやすく解説して行きます。
“想い”を込めて契約した生命保険契約を無駄にしないためにもぜひ知っておいていただきたい知識になります。

どうぞ最後までお付き合いください。





なぜ財産を把握する必要があるのか? 


一般的に相続の開始があると亡くなった方の財産を調査することから始まります。その過程で多額の借金が見つかってしまった場合などは相続放棄も検討する必要が出てくることはご存知の方も多いことでしょう。

ちなみに、相続放棄の期限は相続があったことを知った時から3か月以内とされますので、相続財産の調査はスピーディーに行う必要があるのです。

一方でプラスの財産である預金・有価証券・不動産などは遺言書に指定のある場合を除き、法定相続分通りに分割されるのが一般的です。ただし、プラスの財産であるとは言え通帳や不動産の種類・場所等が分からなければ遺産分割のやりようがありません。

そのため、特定の方へ預金や不動産を遺したいと思われている方は遺言書の作成をおススメするのですが、どうしても生命保険契約だけは遺言書に記載することが出来ません。遺言書で受取人の変更を指定することは出来ますが、そもそも保険契約時に財産を遺したい特定の方を受取人として指定しているはずです。

ということは、生命保険契約があることを受取人が知らなかった場合、せっかく契約した生命保険も役に立たなくなってしまう恐れがあるのです。親のメインバンクや所有不動産は何となく分かっても、生命保険契約まで把握するということは中々難しいことだと思います。

そこで2021年7月1日より生命保険協会では新たに「生命保険契約照会制度」というものをスタートさせました。制度について見て行きましょう。


生命保険契約照会制度 





上図のように配偶者を受取人とした生命保険契約に加入していたとしても、配偶者が保険契約の有無を把握していなければ保険金を請求することは出来ません。

保険契約の有無を調べる方法としては次のようなものが考えられます。

・保険証券を探してみる
・保険会社からの郵送物がないか探してみる
・保険料の引き落としがないか通帳を確認する
・保険料をカードで支払っていないか明細を確認する

これらの行動から加入している保険会社・保障内容・受取人が分かれば自身で請求することが出来ますが、調べても何の手掛かりも無かった場合。新たに誕生した「生命保険契約照会制度」を活用することで保険契約の有無を調べることが可能となります。


制度の概要 





利用できる人


照会対象者が死亡している場合

①照会対象者の法定相続人
②照会対象者の法定相続人の法定代理人または任意代理人
③照会対象者の遺言執行人

任意代理人の範囲は弁護士や司法書士など財産管理を行うにふさわしいと生命保険協会が認めた人となります。


照会対象者が認知症等により判断能力が低下している場合

①照会対象者の法定代理人(成年後見制度を利用している場合)
②照会対象者の任意代理人(任意後見制度を利用している場合)
③照会対象者の任意代理人(上記以外)
④照会対象者の3親等以内の親族

後見人以外の任意代理人については照会対象者が死亡している場合と同様ですが、注目していただきたいのは3親等以内の親族も照会可能という点です。
ただし、照会対象者が死亡していない場合は病院代や所定の身体状態による出費等、緊急の資金として必要性がある場合に限ります。

「認知症になってしまった親がどんな保険に入っているか知っておきたい」
というケースでは本制度を利用することは出来ませんのでご注意ください。


必要書類と利用料


照会対象者が亡くなっている場合と判断能力が低下している場合で必要となる書類が異なります。
ここでは代理人や後見制度を利用していない場合を想定してご紹介します。


照会対象者が亡くなっている場合(照会対象者の法定相続人が利用)

・照会者の本人確認書類
・法定相続情報一覧図又は相続人と被相続人の関係を示す戸籍等
・照会対象者の死亡診断書


照会対象者の判断能力が低下している場合(照会対象者の3親等以内の親族)

・照会者の本人確認書類
・照会対象者の同意書(本人の同意が取得できる場合に限る)
・照会者と照会対象者の続き柄が証明できる住民票等
・生命保険協会指定の診断書(HPから印刷し医師に作成を依頼)


照会対象者の判断能力が低下している場合は必要書類の中で注意していただきたい点が2つございます。

1点目は“照会者と照会対象者の続き柄が証明できる住民票等”と記載がある部分ですが、3親等ということは保険契約の有無を調べる対象者の甥や姪、孫も対象です。しかし、住民票では3親等までの続き柄は記載されていませんので、契約照会を行う方の立場によっては戸籍謄本が必要になってくるケースも存在します。

2点目は“生命保険協会指定の診断書”と記載のある部分です。作成を依頼する病院により異なりますが費用が発生しますのでご注意ください。

制度を利用する場合は上記必要書類の他に照会一件当たり3,000円(税込み)の費用が必要です。なお、災害時は利用料や書類の提出は必要ありません。


契約の有無が判明したら


生命保険会社全社に対して調査にかかる時間はおおよそ2週間程度とされています。本制度はあくまで契約の有無を確かめるところまでになりますので、照会対象者の契約があった場合は受取人自らが保険会社へ連絡し請求することになります。

また、保険契約の種類も調査してくれるわけではありませんので「死亡保険」以外の場合も存在します。その際に解約返戻金のある保険であれば相続財産の一部となりますので合わせて注意していただきたい点です。


保険以外の財産はどうやって把握していくか? 





「生命保険契約照会制度」の誕生によって生命保険契約の有無に関しては、対象者が亡くなった後であれば把握しやすくなりました。

では、その他の預金や不動産はどうでしょうか?
不動産に関しては以前当ブログでもお伝えした通り「所有不動産記録証明制度」という制度がスタートすることになりますので、生命保険同様に「どこにどのくらいあるのか?」が把握できるようになりますが、預金はまだまだ調査難易度の高い財産と言えるでしょう。


現在金融機関では「預貯金口座付番制度」と言って、口座開設をする際にマイナンバーの届け出を求めるようになりました。ただし、これは義務ではなく任意ですので届け出をしないからと言って取引に影響が出ることはありません。
「預貯金口座付番制度」が今後義務化される可能性も大いに存在しますが、マイナンバー1つであらゆる財産を紐づけできるようになるという未来はまだまだ時間がかかると言えるでしょう。

なぜなら、相続財産調査は便利になる反面、国に自身の財産を完全把握されることに抵抗を覚える方もいらっしゃることから、ネットを中心に根強い反対意見も多く目にします。


では、現時点で私たちが出来る財産把握の方法にはどんなものがあるのでしょうか?


元気なうちにエンディングノートを書く 





親世代の財産を把握するということであれば“書いてもらう”という表現が正しいですね。
もしくは多少の費用は発生しますがより確実な方法として“遺言書を作成してもらう”というものもございます。

いずれも中々言い出しにくいことではありますが、財産を把握できなくて困らないように今のうちから出来ることは進めておくことが重要です。また、本ブログをお読みになられている高齢者の方であれば、あらかじめ自身の意思を次世代へ明確に伝える手段ともなることですので、どうぞ前向きな気持ちで書き出してみてはいかがでしょうか。





今回のまとめ 


「生命保険契約照会制度」のスタートにより親世代が契約した生命保険契約の調査が便利になりました。
しかし、生前に調査を行おうとした場合“緊急の出費が必要”な場合以外制度自体の利用は出来ません。
個人的な考えですが「保険金の未払いを業界全体で防いでいく」ための制度でもあるのかなと思います。

もっとも生前に本制度を際限なく利用できるようになってしまうと、モラルハザードが発生するリスクもあるため、慎重な制度運用には理解できる部分もございます。


結局のところマイナンバーですべてを紐づけることが出来れば便利になることは間違いありませんが、法定相続人についてまでは現行のマイナンバー制度で把握することは出来ません。これらを解消するために、横断的な制度の誕生が必要だと考えますが実現するには長い時間を要することでしょう。

そこで現時点で出来る対策としてエンディングノートや遺言書というものを活用すれば、財産を受け継ぐことになる次世代の方も多大な手間をかけることなく、スムーズに財産を引き継ぐことが出来るようになります。

今年もお盆に帰省することは中々難しいと思いますが、もしオンラインで親世代と話をすることがあればそれとなく伝えてみるのも良いのではないでしょうか。また、親世代の方々もこの機会にご自身の財産を棚卸する目的で一覧表にしてみるのも良いでしょう。

当ブログが相続に関して親子で話し合う一助となれば幸いです。


最後までお読みいただきありがとうございました。 



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