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公正証書遺言の作成と流れその1
こんにちは!
司法書士法人府中けやき共同事務所の秋池です。
約1か月半に及ぶ緊急事態宣言が解除されました。幸い当事務所では感染者を出すことなく過ごすことが出来ましたが、当面の間お客様とのやり取りはできる限り電話・メール・郵送を基本として行ってまいりますので、ご協力いただきますようお願い申し上げます。早く元の状態に戻れる日が来ることを願ってやみません。
さて、今月は『公正証書遺言の作成と流れ』と題して、公正証書遺言の作り方を司法書士としての視点から解説していきます。
昨年の相続法改正に伴い自筆証書遺言の方式が緩和されたことから、当ブログでも書き方・書けることについて以前解説させていただきました。その際、公正証書遺言に関しても「費用はかかるが、確実性の高いもの」である旨軽く解説しましたが、今回はさらに掘り下げて公正証書遺言の作り方・作成の流れ・費用・確実性が高いのはなぜ?といった部分をお伝えしていきますのでどうぞ最後までお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
公正証書って何?
公正証書遺言の公正証書とはどういった物であるか皆さんはご存知でしょうか?
公正証書とは公証役場というところで作成される公文書(公正な第三者である公証人が、その権限に基づいて作成した文書)のことを指します。おそらく、ほとんどの方が行ったことのない場所だと思いますが、全国に約300か所設置されており、法務省の地方支分部局である法務局又は地方法務局に所属している機関です。
公証役場には公証人という方々がいらっしゃるのですが、この方々は元裁判官や元検察官、元法務局長など法律の専門家として長年勤めた方が国から任命され、公正証書の作成にあたっています。ちなみに公証人は準公務員という扱いになるため、この方々が作成した公正証書は公文書となるわけです。
公正証書遺言の作り方と流れ
1.事前の打ち合わせ
ここでいう打ち合わせは私たち司法書士や弁護士といったサポートする人との打ち合わせではなく、公証役場と事前に打ち合わせをする必要があります。
「公正証書遺言を作りたいので今日作ってください」
ということは出来ません。必ず事前にどんな財産を持っていて、誰に渡したいかなどを公証役場と打ち合わせする必要があります。
公証役場によっては打ち合わせから公正証書の作成までに1カ月ほど待ち時間が発生してしまうこともありますので、十分に余裕を持ったスケジューリングが必要です。
お一人で打ち合わせまで進める場合は、財産目録や不動産登記簿の用意・作成完了までのスケジューリングに苦戦される方が多く見受けられます。もし、ご自身で進めることが難しいと感じた場合は、弁護士や司法書士にサポートを依頼するとスムーズに進めることが可能です。
ご自身で進めたい方のためによくある必要書類等の一覧を作成しましたので参考になさってください。
・戸籍謄本 (相続人に相続させる場合:遺言する方・財産を受ける予定の方いずれも)
・固定資産課税明細または固定資産評価証明書
(当該年度のもの:譲りたい財産に不動産がある場合)
・不動産の登記簿謄本(譲りたい財産に不動産がある場合)
・遺言する方の印鑑証明書(3ケ月以内のもの)及び実印
・通帳・証券等のコピー(預金や証券等を譲りたい場合)
遺言の内容や公証人によって上記以外の書類を用意する必要もありますのでご自身で行おうとする方は事前に公証役場へお問い合わせください。
2.証人2名を連れて公証役場に行く。実印も忘れずに。
打ち合わせが完了し、事前に日時を予約の上、いよいよ作成の日を迎えました。公証役場に再度出向くわけですが、公正証書遺言の作成時は証人2名が必要です。
また、遺言書の中にも証人の情報(住所・氏名・生年月日・職業等)が記載されるため、文案作成の段階で誰を証人とするかは決めておく必要があります。
あなたが決めた証人は公正証書遺言の作成作業中ずっと立ちあう必要があります。そのため、遺言の内容も当然耳に入ることになりますので、信頼できる方に証人を事前に依頼しましょう。
「だったら家族がいいかな」
と思うかもしれませんが、財産をもらうことになりそうな人(推定相続人、受遺者、それらの配偶者と直系血族)、未成年者は証人になれません。
どうしても証人が確保できない場合、公証役場を通じて有料で紹介してくれることもありますが、一般的に公正証書遺言を作成する場合は弁護士や司法書士にサポートを依頼する方も多いですので、その場合は私たちや事務所の事務員が証人になることになります。
証人2名を連れて公証役場に行った後は、遺言内容に間違いがないかを確認しながら、作成作業を見守ることになります。公証人があなたの意思通りに遺言書を作成したことを確認し、署名捺印(実印)。続いて証人2名も署名捺印。最後に公証人が署名捺印し公正証書遺言の作成は完了します。
3.作った後の保管と誰に持っていてもらうか?
公証人は同じ内容の公正証書遺言を3通作ってくれますが、そのうちの1通は原本として公証役場に保存されます。保存期間は原則20年(公証人法施行規則第27条)となっていますが、現実には20年ピッタリで破棄する公証役場は少ないです。厳密に言えば公証役場ごとにどの程度の期間保存してくれるか開きがあるということになります。
残りの2通は正本と謄本になりあなたに渡されます。
正本とは原本と同じ効力を持つものですので、実際にあなたが亡くなってしまった後、残された家族が金融機関等で遺言書の通りに手続きをする際に必要になります。
謄本は原本の写しという扱いであり、正本ほどの効力はありませんが、金融機関によっては手続きに使用できる場合もあります。不動産の名義変更の際も、謄本を使用することが出来ます。
あなたに渡された正本と謄本ですが、そのまま2通とも自宅で保管してもよいですが、正本を遺言執行者。謄本を自分で持っておくというのが後々の手続きを考えた上ではスムーズな保管方法だと言えます。
遺言執行者とは前回のブログでも解説した『遺言書に書けること』の中に登場する、遺言書に書かれている内容を実現する方を指します。一般的に財産を譲り受ける方を遺言執行者に指定しますが、遺産争いで揉めることが予想される場合などは弁護士を指定しておく方もいらっしゃいます。また、揉めることが予想されないケースでも身寄りがない方の場合などは、やはり弁護士や司法書士に依頼されるケースも存在します。
続いて公正証書遺言を作成する際に発生する気になる費用と注意点について解説していきますが、記事が少し長くなってしまうため別記事に分けて記載しています。コチラのリンクから後半の記事へジャンプできますので是非続きもご覧ください!
- 住所
- 東京都府中市寿町1丁目8-8-701
※駐車場有 - 業務時間
- 月〜金 9:00〜18:00
※2024年より変更いたします。 - 最寄駅
- 最寄駅:京王線府中駅
- 電話番号
- 042-334-2700
司法書士法人府中けやき共同事務所
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